ドラえもんから現実へ

ドラえもんは時間に追われていた。少し休養が欲しかったが、そんな時間はなかった。
ある日、のび太ひみつ道具を出してくれた。和室の狭い部屋に、どんと置かれた浴槽みたいなもの。浴槽の中は白い煙で覆われ、中が見えなかった。そのひみつ道具は、"今"から解き放たれ、自由に遊びに行けるというものだった。浴槽の中に入ると、そこには楽しい楽しいテーマパークが広がっていた。すごい。すごいよ!ドラえもんは喜び、そこで遊び呆けた。
一旦浴槽へと這い上がり、また浴槽の中に入った。次に通じていた世界はテーマパークではなく、アクションゲームの世界だった。ドラえもんがアクションゲームの主人公。プレーヤーだ。ドラえもんは、敵をなぎ倒し、時間と用事に解放されたように遊んだ。遊んだ。敵を倒した。倒した。倒した。楽しかった。こんなに暴れ回るのは久しぶりだった。
でも疲れた。
ドラえもんは浴槽へ這い上がる。這い上がった先にはのび太と、ドラミが居た。「どうしたの?」と、ドラえもんが言った。のび太は申し訳なさそうにして言った。「実はこれ、どこでもドアなんだ。白い煙で見えないようにしてたんだ。」 「ということは、遊んでる間、時間は進んでるってこと?」ドラえもんが言うと、のび太とドラミは頷いた。
ああ、どうしよう。やらなきゃいけないことがいっぱいあったのに。どうして今まで遊んでいたんだ。時間が進んでいると知ったらこんなことはしてなかっただろうに。過ぎた時間はもとには戻せない。ドラえもんは泣いた。のび太君のばか!


ごつん。
頭打った。
目が覚めた。
誰だよ、CDコンポこんなところに置いたのは。
私だ。
っていうか夢か。
なんでひみつ道具を出したのがドラえもんじゃなくてのび太なんだよ。
ああ、ねむい。
ごつん。
いてえよ。