ベッドタウン

駅でおじさんが電話で「この辺はベッドタウンだからねー」なんて話しているのを聞いて、なんだか私はビビっときた。ベッドタウン。なんと素敵な言葉だろう。寝る場所の町。私が住んでいるこの町は、ふかふかベッドのような、心安らぐ安心感に包まれている町なんだ。そう思った。
私の住んでいるところは、駅周辺に本屋やスーパーがあるし、流行りの帽子や綺麗な雑貨が売ってて、上の階にはゲームセンターがあるような少し大きな建物もあるのだ。だけど緑いっぱいで、自然豊かで、近くには山に登るハイキングコースがある。田舎だけど、特に不便なこともない。家から駅も近いし、ここを離れて暮らしたいと思ったことがなかった。
ゆったりとした居心地のいい、ふかふかベッドの町。ベッドタウンの意味は知らないけれど、きっと素敵な町っていう意味なんだと思うと、ここに住んでいることが嬉しくて、私はルンルンと電車に乗って塾へ向かった。
でもそんな素敵な意味じゃなかった。詳しい意味をパパに聞くと、パパはうーんと言ってパソコンで調べてくれた。「都心に通勤とか通学する人が多い町だって。寝に帰るだけの場所って感じかな」と教えられて私はすごくがっくりした。
主体はあくまで都会なんだ。この言葉には町の素敵さなんて全然籠められてない。文字通り寝るだけの町という意味で、それ以上でもそれ以下でもないんだ。
あーあ。