だったら私じゃない

私「うちが考えるのをやめたらうちじゃなくなる気がする。考えるのをやめたら和泉さんのアイデンティティが失われる気がする。でも先生にはあまり考えるのを推奨されてない」
母「あんまり考えすぎるなって言われたもんな」
私「あらゆる人に言われる」
母「あのさ、アイデンティティとかステータスとか、難しい言葉ママあんまりわからへんわ」
私「うーん、パパが『酒や女や』って言ってたらパパじゃないやん」
母「うん」
私「井脇ノブ子がピンクじゃなかったら井脇ノブ子じゃないやん」
母「その例えよくわからへんけど」
私「浜口親子の父親がおとなしかったら浜口父は浜口父じゃないやん」
母「ああ」
私「それと同じで、考えない和泉さんは和泉さんじゃない気がする」
母「あ、テレビ、この人、今年の目標『ゆるポジ』とか言うてはる。」
私「ポジティブとかうちと縁遠い世界や」
母「そうか?」
私「ポジティブなうちとかうちじゃないやん。ネガティブがうちにぴったりや。……」
母「あれ?新聞どこや。あ、あったあった。」
私「……ん?」
母「ん?」
私「ポジティブな和泉さんも和泉さんな気がする」
母「うん」
私「なあ、どんなうちでもうちはうちやんな。ポジティブな和泉さんもちゃんと和泉さんやし、考えない和泉さんもちゃんと和泉さんやんな」
母「せやで。どんな和泉でも、和泉ちゃんは和泉ちゃんやで」
私「うん。なんか今までうちがうちじゃない気がするとか言ってたんがアホらしくなってきた」
母「せやで」
私「何変なこと言っててんやろ。アホや」
母「アホでええんちゃう」
私「そやな。あ、ママ仕事、時間、大丈夫?」
母「あ、行かな」
私「いってらっしゃい」
母「いってきます」